出張者

小麦イニシアティブの小麦品質と安全性に関する専門家作業グループの第1回会合参加報告

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国名
フランス

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国際的な小麦共同研究のプラットフォームである小麦イニシアティブ(International Research Initiative for Wheat Improvement、略称WI)の小麦品質と安全性に関する専門家作業グループ(Expert Working Group on improving wheat quality for processing and health)の第1回会合が、2016年4月25〜27日までフランス国パリ市にあるフランス国立農業研究所パリ本部で開催されました。参加者は日本、米国、中国、アルゼンチン、イギリス、イタリア、ウルグアイ、オーストラリア、オーストリア、オランダ、カナダ、スエーデン、スペイン、ハンガリー、フランス、南アフリカ、メキシコ、ポルトガルの18カ国の31名でした。

まず、このグループの体制として、出張者がこのグループの議長に、CIMMYTのC. Guzmanが副議長に選出され、他の発起人が執行委員として選出されました。この会合では、グループを構成する種子蛋白質、アレルギー、栄養素、炭水化物、加工、安全性、遺伝資源と命名法の7つのサブグループごとの話題提供と議論があり、以下のような点が今後の国際的な共同研究の重点課題であることが示されました。

  • 種子蛋白質:窒素投入を押さえながら品質を維持する種子蛋白質遺伝子型の解明、気候変動とグルテン品質の関係。グリアジンに遺伝子型のマスターセットの確立。デュラム小麦とのグルテン蛋白質遺伝子型の統一。
  • アレルギー:免疫反応を起こす種子蛋白質とエピトープの正確な把握。アレルギーの原因となる様々な要因(人、環境、品種、加工など)の把握。低アレルギー小麦遺伝資源のマスターセットの作成。ゲノム編集によるアレルギーフリー小麦の育成。糖不耐性も含む小麦アレルギー患者のニーズの理解。
  • 栄養素・炭水化物:食物繊維含量の遺伝的多様性と簡易検定法の開発。加工時における挙動の解析。デンプン合成関連遺伝子命名法の統一。
  • 安全性:世界各地における赤カビ病病原菌とその毒素の多様性、気候変動の影響の理解。遺伝子編集によるカビ病抵抗性の付与。他のプロジェクト(MyToolBox, Mycotool)との連携。重金属、特にカドミウム毒についての検討。
  • 加工:加工過程と栄養素、毒素の分布についての解明。加工過程におけるグルテンポリマー量の変動の解明。
  • 遺伝資源と命名法:遺伝子型カタログに用いられる標準品種のジーンバンクでの共有化、命名法の統一、様々な品質関連形質の変異をカバーするマスターセットの作成。

全体会合では、サブグループ間、他の専門家作業グループとの連携について話し合われ、この分野の国際的な共同研究を行うための予算や、教育訓練の機会についての情報交換を行いました。次回の会合については、来年オーストリアのウィーンで開催される第13回国際小麦遺伝学シンポジウムのサテライトとして行うことが決まりました。

(農研機構 西日本農業研究センター 池田 達哉)

会場の様子
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