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気候変動適応グローバル委員会(The Global Commission on Adaptation)「直ちに適応せよ:気候変動への強靭性推進リーダーシップに対する世界的な要請[Adapt Now: A Global Call for Leadership on Climate Resilience]」概要

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気候変動は、世界中の地域・社会のあらゆる分野における人々・環境・経済に広範囲かつ壊滅的な影響を及ぼしつつあり、今日、人類が直面する最大の危機の一つである。貧しく、つつましい生活を送り、気候変動をもたらす原因に最も関与していない人々ほど、最大の被害を被っている。

もし適切な適応策が直ちに施行されなければ、気候変動は、あらゆる災厄をもたらしかねない。2050年までに、世界の農業生産性の伸びを30%抑制しかねず、世界の5億人の小規模農民が最大の被害者となりうる。十分な水資源にアクセスを持たない人々の数が、現在の36億人から2050年には50億人に増加しかねない。海水面の上昇と深刻な暴風を伴う嵐の増加は、海岸都市に住む数億の人々の居住環境を破壊し、2050年までに毎年1兆億ドル以上の損失をもたらしうる。気候変動は、途上国における貧困線以下の人々の数を2030年までに1億人以上押し上げうる。

気候変動が及ぼす人間生活と経済への損害については、反論する余地はない。今問われるのは、気候変動への対応を先延ばしにして拡大する被害への莫大な負担を覚悟するのか、それとも早急に対策をとることで繁栄の可能性を見出すのか、にある。

本報告書は、適切な適応策の採択が、十分な経済的リターンをもたらしうるものであることを示す。気候変動に対する強靭性の改善への投資利益率は一般に高く、便益費用比率は2:1から10:1とされる。とりわけ、本報告書の分析は、2020-2030年の間に次の5つの分野―早期警戒システム・気候変動に強靭なインフラ・乾燥地農業の改善・マングローブ林保護・水資源の強靭性強化―に1.8兆ドル投資することで得られるリターンは7.1兆ドルに及ぶと推計している。

気候変動への適応策は、将来の損失回避、イノベーションを通じた経済利益の創出、社会・環境的な便益の提供、を通じて、「トリプル・ディビデンド(3重の配当)」をもたらしうる。

グローバル委員会は、適応策による経済・社会・環境的便益について事例を挙げている。例えば、ジンバブウェにおいて、従来品種(conventional maize)を使用する農民に比べ、干ばつ耐性メイズ(drought-torelant maize)品種を採用した農民は、ヘクタール当たり600 kg以上高い収量を得ることができ、この追加的収穫によって、6人家族による9か月間分の自家消費をまかなうのみならず、240米ドル相当の追加的所得をもたらすことで、子供の就学等、世帯ニーズをかなえることが可能となった。

 

より詳しい内容に関しては、以下のリンク等から報告書原文を参照のこと

https://gca.org/global-commission-on-adaptation/report

https://cdn.gca.org/assets/2019-09/GlobalCommission_Report_FINAL.pdf

なお、概要に関する本翻訳は、The Global Commission on Adaptationから公式に承認を受けたものではなく、翻訳上の誤りなどの責任は文責にある。

(文責:研究戦略室  飯山みゆき)

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